2026年の1月から4月にかけて、居酒屋の倒産が88件ありました。東京商工リサーチの調べで前年同期比54.3%増、この集計が始まった1989年以降、同じ時期としては最も多い数字です。

報道の見出しは「過去最多ペース」。値上げ疲れ、宴会需要の減少、客離れ——理由もいくつも並びます。

ですが、飲食の現場で8年間働いてきた立場からお伝えしたいことがあります。これは「飲食業が一斉に沈んでいる」という話ではありません。同じ時期に、好調な飲食店もあります。倒産する店と、生き残る店——その分かれ目には、はっきりした構造があります。

まず「過去最多」の中身を正確に見る

数字は、受け取り方を間違えると判断を誤ります。

88件は前年比54.3%増と派手な数字ですが、件数そのものは4か月で88件、月あたり20件あまりです。コロナ禍の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で本来倒れていたはずの店が延命していた時期があり、その返済期を迎えて倒産が表に出てきている——「過去最多」にはこうした反動の側面があります。

そして、倒産統計に表れるのは負債1,000万円以上の法的整理だけです。借金が膨らむ前に静かに店を畳む休業・廃業は、この数字に入っていません。実際の店舗の入れ替わりは、88件よりずっと多いと考えるべきです。

倒れている店の内訳を見ると、9割以上が資本金1,000万円に満たない小規模な事業者です(2024年度・飲み屋全体)。大手チェーンの倒産はほとんどありません。これは「居酒屋という業態の死」ではなく、「体力のない小規模店の淘汰」が起きている、ということです。

生き残る店に共通する4つの条件

では、小規模でも生き残っている店は何が違うのか。現場を見てきた経験と今回のデータから整理すると、4つの共通点があります。

1. 安さ以外の理由で選ばれている。 「あの店といえば、あの一品」と名前で思い出してもらえる名物や強みがある店は、多少値段が上がっても客が離れにくい。

2. 個人客・少人数の常連で成り立っている。 コロナをきっかけに、宴会・接待・二次会は目に見えて減りました。会社の宴会需要に依存していた店ほど、戻らない客を待ち続けることになります。

3. 価格ではなく理由で選ばれている。 仕入れの高騰で、かつての看板だった「5,000円以下の飲み放題」はもう維持できません。値段でしか選ばれてこなかった店は、その値段が上がった瞬間に、選ばれる理由を失います。

4. 探している人に見つけてもらえる。 良い店でも、その存在が新しい客に届かなければ、常連の自然減で先細ります。ネット検索やAIに自店がどう出てくるか——これが「発見可能性」です。

消えていく店の特徴

逆に言えば、消えていきやすい店は、この裏返しです。安い飲み放題で客を集めてきた店、宴会需要を待ち続けている店、メニューが総花的で「これ」という強みがない店。そして——商品力はあるのに、新しい客にその存在が届いていない店です。

価格転嫁の難しさも、小規模店を直撃しています。帝国データバンクの2025年の調査では、飲食店の価格転嫁率は32.3%。コストが100円上がっても、メニュー価格には32円しか反映できず、残りの68円は店が利益を削って飲み込んでいる、という意味です。値上げで客が逃げるのが怖いからです。利益を削りながらゼロゼロ融資を返す——この組み合わせは、長くはもちません。

4つ目の「発見可能性」だけは、外から手当てができる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

生き残る店の条件のうち、1〜3(名物・常連・選ばれる理由)は、店の中で時間をかけて育てるものです。外部の誰かが代わりにやれることではありません。

ですが4つ目の「発見可能性」——ネット検索やAIでの見つけられ方——は、外から手当てができます。そして多くの店が、ここに穴を空けたままにしています。

今はお客さんが店を探すとき、Google検索だけでなく、ChatGPTやGoogleのAI回答、地図アプリのAIにも「この近くでいい居酒屋は?」と尋ねる時代です。そのとき自店の名前・特徴・強みが正しく出てくるか。出てこなければ、どれだけ良い店でも、新しい客の選択肢に入りません。これは店の中からは見えにくく、放置されがちな部分です。

正直に言うと、集客改善で救えない店もあります

ただ、ここははっきりさせておきます。

ネット・AI上での見え方を整えて効果が出るのは、「商品力と固定客はあるのに、新しい客に見つけてもらえていない店」です。逆に、先ほどの1〜3(名物・常連・選ばれる理由)が弱い段階だと、見つけられ方だけを整えても続きません。来た客が「もう一度来たい」と思わなければ、集客は、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。

ですので、もしご相談をいただくとしても、最初にやるのは「今どの状態にあるか」を一緒に見るところからです。集客の前に直すべきことがあれば、それを正直にお伝えします。

飲食店の「見つけられ方」を整える支援をしています

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参考:東京商工リサーチ「居酒屋の倒産が過去最多ペース、1-4月は5割増」(2026年5月)、帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査」(2025年7月)。記載の数値は2026年5月時点で確認できたものです。